3.ジャパニーズ・ボブテイル
江戸後期に流行った短尾(ボブテイル)
ジャパニーズ・ボブテイルに必須である短尾(カギ尻尾)は、江戸時代後期に発展した浮世絵の中で盛んに描かれ始めます。
平岩米吉氏の調査によると、最初に短尾の猫を浮世絵に描いたのは喜多川歌麿で1782年以降の作品に見られます。更に歌川国芳においては美人画などに猫を積極的に描いたほか、歌舞伎風に猫を擬人化した猫物語「朧月猫乃草子(おぼろづきねこのそうし)」を山東京山とともに残すなど、無類の猫好きでした。
弟子にはまず猫の写生をさせ、飼い猫が亡くなると両国の回向院(えこういん)で供養し、家には猫の位牌や過去帳を揃えるほど。
朧月猫乃草子は1842〜1849年の8年間をかけて猫の習性や待遇を書き綴った七編十四巻の大作。その七編上巻に「猫のしっぽも長いは、はやらず」とあり、当時の短尾の流行がうかがえます。
短尾が流行した理由は二面性があり、ひとつは、猫が年をとると尾が二股に分かれ化けるという伝説があったため(猫股伝説)、短尾が珍重される背景があったこと。この風習は昭和初期まで続き、尾を切り取られた猫も多かったそう。
もう一点は、短尾は尾骨が湾曲した突然変異にもかかわらず優性遺伝のため繁殖が可能であったこと。流行すれば一気に広まるのも頷けます。
ジャパニーズ・ボブテイルのスタンダード
さて、招き猫発祥の地「豪徳寺」の記事でも触れましたが、短尾の日本猫に惚れ込んだElizabeth Freret氏によって1968年、3匹の日本猫が初めてアメリカに渡り、1971年にジャパニーズ・ボブテイルと名付けられ猫種(ブリード)として確立されました。
では最新のジャパニーズ・ボブテイルのスタンダードとはどんなものなのでしょう?CFAの定義は文字情報(英文のPDF)だけですので図解にしてみました。
体躯
ジャパニーズ・ボブテイルの写真を見るとスリムで脚が長い姿に違和感を覚えた方は多いと思いますが、詳細を読み込んでみると3点を除いては意外にも日本猫の特徴を良く現していると思えます。世の日本猫の多くは特に北へいくほど狸のように下半身太りしていますが、贅肉をそぎ落とした骨格をイメージすると、おおむねこの絵のような猫になります。
史実とジャパニーズ・ボブテイルとのギャップ
前回の記事で日本古来の絵画にみる猫の特徴を整理しましたが、CFAのスタンダードとの違いを挙げてみると以下のようになります。
- 目の少し下という鼻の位置
- 短尾
- スリム
短尾は一時的に江戸後期〜昭和初期に流行したにすぎないと考えると、この3点が古来日本人が馴れ親しんできた姿と異なるために、ジャパニーズ・ボブテイルに違和感を覚えるのではないでしょうか。
次回は、最後に平岩米吉氏の考えた日本猫のスタンダードなどに触れたいと思います。
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