「谷中」上野・寛永寺の歴史と歩む

平成も20年度となった東京は、2週に渡って花見日和と桜の見頃に恵まれて、春爛漫を迎えました。
東京都心で花見のTV中継とくれば、各局まずは上野公園の桜を映します。
大きな幅20mほどの沿道の両脇には、眼前まで手を差し伸べているかのように枝を張った見事な桜。そして沿道脇には、桜の枝に抱かれるようにして最高の気分でくつろぐ老若男女の飲んべぇたちと笑い声。上野公園の花見は、桜を楽しむというだけでなく「一年間お疲れさま。さぁ新年度を始めよう!」という人々の熱気で満ちあふれています。池之端の西郷さんから上野動物園の入口付近まで続く桜のトンネルを通り抜けると「ふぅ〜花見した〜!」と一気に春を満喫した気分になれます。
そして子供連れの家族はみな上野動物園へ。表門を入るとすぐ左に、なぜか動物園の敷地内なのに古い五重塔が立っています。
それは、かつてこの地にあった寛永寺の遺構。上野の山に散在する多宝塔や清水観音堂などの堂塔、そして見事な桜も、元は寛永寺の境内として整えられたものでした。

寛永寺の歴史

徳川将軍代々の墓所(霊廟)は、日光山(東照宮輪王寺)、芝の増上寺、そして寛永寺谷中霊園にあります。
寛永寺江戸城の鬼門を封じる祈願寺として三代将軍家光が上野山に開基。1625年(寛永2年)、上野公園最奥にある東京国立博物館のある場所に本坊から竣工して開山し、1698年(元禄20年)今の大噴水あたりに江戸最大の建築物だった根本中堂(こんぽんちゅうどう)が完成し伽藍が結構するまで、70年以上の歳月をかけて整備されたもの。最盛期の寺領は、今の東大病院・根津・東京芸大・谷中一帯まで及び120万平方メートルあったと言いますから、皇居と同等の敷地を誇っていたことになります。
開山したのは、家康・秀忠・家光の三代に渡り江戸幕府の宗教政策ブレーンとして登用された天海僧正。天海さんは当時仏教界最大の威光を放っていた天台宗の名僧であり、臨済宗の総本山 南禅寺の住職であった崇伝(金地院崇伝)とともに僧侶ながら徳川幕府の政務に深く関わっており、ふたりは黒衣の宰相とも呼ばれています。当初、江戸城入城の際に家康は、先祖松平家ゆかりの浄土宗増上寺菩提寺にするつもりでおり、1598年(慶長3年)江戸城の裏鬼門にあたる東京 芝に大伽藍を整備しています。しかしいっぽうで臨済宗の崇伝や天台宗の天海を幕府の参謀に迎え入れたのは、朝廷(京)に深く関わっていた寺院の権力を幕府に結集し、調整役として登用しようとした家康ならではの思惑であったとも言われています。
天海さんは、江戸城のお披露目で初めて家康に謁見した1590年、すでに55歳ほどになっていましたが、1643年(寛永20年)108歳で没するという不老長寿を全うしており、その秘訣をこう残しています。
「気は長く、勤めは堅く、色薄く、食細くしてこころ広かれ」
「長命は粗食、正直、日湯、陀羅尼、折々ご下風あそばざるべし」
(日湯:毎日の入浴、陀羅尼(だらに):無念無想でお経を唱えること、下風:おならのこと。下は二代将軍秀忠の問いに答えたもの。)
これら名言のようにユーモア精神のある徳深い人柄も、相談役として代々の将軍の帰依に預かったゆえんかもしれません。
こうして、天海さんの献言により上野山に寛永寺ができ、京の比叡山に対して東叡山と名付けられ、やがて徳川将軍の菩提寺となります。さらに寛永寺の山主は朝廷の法親王が就くようになり比叡山と日光山の山主をも兼務し、江戸時代を通して宗教政治頂点の役割を担いました。とはいえ増上寺もありますから、将軍の墓所は芝の増上寺寛永寺交互に設けられることになったのです。
また天海僧正が境内に植えたことに始まった桜は早くから庶民にも開放され、上野は花見の名所となりました。その伝統が今もこうして受け継がれているわけです。
さて、現在、寛永寺はいずこへ?
1868年、明治新政府旧幕府軍を一掃した、いわゆる戊辰戦争が始まります。その初戦、鳥羽伏見の戦い旧幕府軍が新政府軍に敗れると、徳川慶喜大坂城を脱出し江戸の寛永寺に謹慎します。新政府軍によるあわや江戸総攻撃の目前、新政府軍の西郷隆盛旧幕府軍勝海舟が3月13日に会談し、慶喜の水戸謹慎と4月11日の江戸城無血開城が決定します。
しかし、江戸城抵抗勢力彰義隊を結成し上野の山に集結。彰義隊寛永寺の山主であった北白川宮能久親王を擁立し、5月15日、新政府軍の宣戦布告により上野戦争が勃発します。圧倒的な戦力の前に彰義隊は一日にしてほぼ全滅、寛永寺の大伽藍はそのとき大部分が焼失し、江戸時代とともに歴史の幕を下ろしたのです。上野動物園にたたずむ五重塔は、上野戦争関東大震災や第二次大戦の空襲にも耐え、創建当時のまま残っているものです。
その後、上野山の大部分は明治政府に接収されますが、寛永寺は今の東京国立博物館の裏手にある徳川将軍の霊廟(墓所)を見守るかのように、ひっそり復興が許されます。山手線で鴬谷−日暮里を行くと左手山側には霊気漂う土手がずっと続いており「何だろう」と思っていましたが、それが霊廟のある寛永寺霊園でした。

上野〜谷中散策

谷中へ行くには日暮里駅か千代田線千駄木駅が最寄りですが、上野公園から谷中霊園を抜けて散歩するのも四季の風情が感じられてオススメです。
歩くのが辛い方は、東京国立博物館前から谷中銀座入口まで循環バス「東西めぐりん」も走っています。1回100円(残念ながらシルバーパスは使えません)。15分おきくらいで来ます。

東西めぐりんの路線図と運行状況(PC/携帯)
2週目の桜と谷中の猫ちゃんたちを見に、今年も散策してきました。写真の場所は下記の青いマークの場所になります。

大きな地図で見る

上野桜木

上野と谷中の中間、言問通りのあたりは上野桜木という地名が付いています。文字通り桜がよく似合うこじんまりした町並み。
桃林堂
とても素敵な和菓子屋さんです。お店の中に入ると、恐らく昔から何も変わっていないような風情に溢れています。6席ほどお茶ができるようです。小鯛焼と桜餅を買いました。

クンクン かわいらしい鯛焼さんニャ

東叡山 圓珠院
桜が良く似合う小院。

かわいい八重桜も咲いていました。

東叡山 寛永寺 根本中堂
現在のものも立派なお堂ですが、これは復興にあたり埼玉県川越の喜多院から移したもの。喜多院は、寛永寺を開山した天海さんが家康と出会ったとき(1590年)に入山していたお寺(無量寿寺北院)。このお堂は1638年建立のものと言いますから、1643年に亡くなった天海さんは川越でそのお堂を見ていたかもしれません。

谷中

谷中岡埜栄泉
有名な喫茶 愛玉子(オーギョーチー)の向かい。豆大福がおいしいです。あんこぎっしり、でも甘過ぎず。

谷中堂
招き猫グッズ専門店。残念ながらお休みでした。

谷中霊園

大政奉還により水戸に追われた徳川慶喜墓所は、この谷中霊園にあります。慶喜明治維新後、神道に改宗したため代々の菩提寺ではなく、寛永寺に寄り添うようにここに眠っています。
交番前

天王寺

桜のトンネル 地元の人はここを歩きます


ショコラティエ イナムラショウゾウ
谷中でスイーツといえばイナムラショウゾウのケーキが有名ですが、今年2月にショコラティエもオープンしました。訪れた日、稲村さんはこちらのお店におりイートインのお客さんにケーキと珈琲を運んでいらっしゃいました。
ピエールマルコリーニやアオキもいいですが、稲村さんのスイーツはどんな世代でも美味しいと感じるような奥ゆかしく優しい味です。

谷中せんべい

佃煮 中野屋
うなぎの佃煮はいつ行っても売り切れ...。おばあちゃん曰く佃煮は冷蔵で2、3週間もつそう。「うちのは何にも入ってないからね〜冷凍もできるよ〜」



TORIYA
夕焼けだんだんの上にある焼鳥屋さん。うちのヨメと猫ちゃんたちがいつもお世話になっていますm(_ _)m

谷中ぎんざ

夕焼けだんだんと猫ちゃんたち
階段を通称「夕焼けだんだん」と言うそうです。
なんと左側にマンションが建ってる!左の土手に猫ちゃんたちがいたのですが・・・┐(-。-;)
と思ったら反対側にいました!

いらっしゃい

zzz...



夕焼けだんだんのアイドル
日陰にぴったり収まってマス
ちょっと太った?

キャットハウスも完備されていますね。TORIYAの大将曰く「そのうちみんなこっち側に帰ってくるんじゃない?」とのことでした。

寛永寺小院の寺町として栄えてきた谷中は、関東大震災や空襲の被害に遭わなかったため今も昔ながらの町並みが残っており、商店街「谷中ぎんざ」は活気に満ちあふれています。アテネ五輪の金メダリスト北島君はここのお肉屋さんのせがれだそう。



おしゃれ小物 多満留(猫グッズ)

菓寮 花子路(焼かりんとう
ユーミンお気に入り」とあったので飛びついてみました(妻)

ノンフライらしく、固すぎずさっぱりしつつも黒砂糖の良い香りがして美味なり

肉のすずき(メンチカツ)

いちふじ(鶏のお惣菜)

谷中ぎんざが終わりT字を左へ50mほど進むと、やなか珈琲があります。
やなか珈琲店
珈琲好きなら必ず寄るべし。焙煎したての珈琲豆はこんなにも香るものかと感動すること間違いなし。


地図の工場マークそのまんま。最近こういうのも見かけなくなりましたねぇ。

この辺で商店街は終わり。千代田線千駄木駅はすぐそこ。
地下鉄で帰ってもよし、東西めぐりんで上野・浅草に行ってもよし、もう一度夕焼けだんだんに戻り、のんびり夕暮れまで猫を眺めてもまたよし。

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